スペインポルトガル

スペイン・ポルトガル紀行
瀕死の大地イベリア半島

はじめに

 ポルトガルとスペインはどんな処か?季候についてある程度の想像を抱いていた。緯度の上から云うと日本の東京から函館あたりに位置する。自然環境は附近の海流にも影響を受けるが、太陽の恵みは同緯度上はみな同じだから、日本の其れと余り変わらない筈である。

 もう一つ、宗教についての疑問と云うか?確認と云うか?大陸の発見などと、美名美談に飾られながら、略奪と搾取などの残虐無慈悲な行為を可能にした精神の拠り所とは何か?など、ただ漠然とした思いを抱いていた。

 

第1日目

 午前中に成田空港を飛び立った便は一路ベルギーのブリュッセル空港へ。所用時間約13時間。地球の自転に反して西に進むのだから日本の明石135度でスペインが0度附近だから15度1時間として9時間の時差が有る。11時半に出発して13時間経過すれば夜中の12時半なのに、まだ時刻は4時間しか経っていないので真昼の3時半で有る。頭は真夜中なのに眼は紺碧の青空。

  一旦ベルギーに着陸して、暫く時間待ちをして乗り換える。チケットを見せ待合い室に入る。缶コーヒーや缶ジュースがセルフサービスである。早速眠気を醒まそうと缶コーヒーをカウンターに所望し、テーブルに立ち帰って、さて呑もうかと丸環に指を突っ込んでやおら引っ張る。

  丸環だけがポンと取れて缶の口は開かない。不良品だ!少し恥ずかしいがもう一本所望した。今度は開いた。飲めた。私の他にも缶が開かずに取り替えに来ている人が居た。

 2時間の空路、バルセロナに到着。この頃になると無理矢理にでも目が醒める。
 雲の切れ間からみえ隠れする広漠たる荒廃地に暫し唖然とする。東京から函館の景観を、どんなに重ね合わせても、重なり合う余地はない。それ程迄に自然環境を蔑ろにした土地である。下に見えるのは赤茶けた地肌を曝した住居地、一面緑の丘陵畑地、岩肌丸出しの小山、何処を看ても森林はない。

 空港から出迎えのバスに乗り、市内の宿泊ホテルへ向かう。午前中に日本を発って夜半にホテル到着だから、見た目は辻褄が合うが徹夜をしたのと同じで、体内時計はメチャメチャである。

 現地ガイドよりスペインについての概略説明がある。面積は日本の1.3倍。人口は四千萬余。貨幣単位ペセタ。100ペセタ=60円余。チップ100ペセタ。言葉はスペイン語。蛇口の水は飲めません。正確さは駄目で、ズボラです。電圧220ボルト(日本の100ボルトなら感電死の可能性は低いが、220ボルトの電圧で感電すると殆ど死亡する)。

 ホテルの観察をしてみよう。水回りは、便器+浴槽+洗面化粧台+ビデ。歯磨きと剃刀は無い。タイル工事は、素人よりは上手だが矢張り下手。セーフテイボックスの鍵の調子が悪いので、もし出せなくなっては一大事と使わなかった。

 エレベーターはとても危険。開閉は自動だが、扉の閉りストップの安全装置がない。扉が閉まり掛けたら、中の者が「開け」ボタンを押さない限り無理矢理にでも閉まってしまう。部屋には果物の盛り皿が用意されていた。渇いた咽を潤そうとパクリとやったら、形は果物だが中身は似て非なるもの。このホテルは5ツ星ホテルで有る。